アルテピアッツァ美唄(びばい)に行った。
札幌から電車とバスを乗り継いで1時間ほどの所にある、小学校の廃校を利用した彫刻とランドスケープが一体となった芸術公園だ。
前から噂で聞いてはいたが、実際に見たそれは予想以上で、私は時さえ忘れてその場を歩き回った。
美唄は元々炭鉱町で、最盛期は9万人の人口を数えたが、閉山後は6万人の人々が故郷を去った。言わば廃墟同然になった町を、再生、創造する物語なのだ、アルテピアッツァ美唄は。
校舎や体育館を改造してできたギャラリーや野外のランドスケープには、イタリアに住む世界的な彫刻家、安田侃(かん)の彫刻が40点近く点在する。
彼は少年時代をここで過ごし、原風景を心に刻んだ。その思いが強かったからだろう、名声をなした後も東京などの大都市ではなく、人口3万にも満たない故郷の小さな町にこの18年間心血を注いでいる。
点在する彫刻のほとんどは彼の代表作ばかりで見応えがある。
だが、私が一番気に入ったのは、この場所にひそやかに横たわる時間の感覚だ。そしてそれと寄り添う自然の感覚だ。
この2つと彫刻がブレンドされて醸し出される場の雰囲気は未だ味わったことのない物で、その中を歩きながら私は自分の感覚がどんどん鋭く敏感になって行くのを感じた。
突然、スカボロー・フェアが頭の中で聴こえてきた。
Are you going to Scarborough Fair?
Parsley, sage, rosemary and thyme,
Remember me to one who lives there,
For she once was a true love of mine.
こんな夢を僕たちは昔見ていたんだね・・・
そう、誰かがささやいているような気がした。
ここには精霊が棲んでいる。
かずま