ニセコでつくっていたレストランが完成したので引き渡しをした。
次の日の朝、羊蹄山の麓が雲海で覆われ、その向こうから朝日が昇った。
神を感じた。静かな感動を覚えた。
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時間があったので札幌に戻り、帰りの飛行機までそこでゆっくりしようと思った。
途中の車内でいつものように事務所にメイルを送った。
戻って来たメイルを見て言葉を失った。
メンバーの妹に不幸があり、たった今、幼子が亡くなったという知らせだった。
頭の中が真っ白になり、しばらく何も考えられなかった・・・
気がついたら、乗換えの小樽で降り、海に向かって歩いていた。
私は心を鎮め、祈りたかった。
魂の眠る場所で。
子供の頃から、海は魂の眠る場所だった。
長崎の高台から西の海に沈む夕陽を見ながらいつもそう思った。
特に黄金色に輝く瞬間はこの世の果てのようで、死への誘惑とエロスを子供心に直感した。
小樽の海は静かだった。
埠頭の先端から望む空と海は同じ色をして溶け合おうとしていたが、それを拒むかのように防波堤が一本の線を引いていた。
この世と向こうの世界の境界のようだった。
私はそれを見ながら、眠りについた幼子や、その母親である妹、ヨシザカ、私の父、この世に生まれて来る前に逝ってしまった私の子のことなどを思い出し、鎮かに涙を流した・・・
長い間、海を見ていた。
突然、カモメが飛んで来て、私の思いをくわえ遠くへ去って行った。
今頃、私の思いは魂の眠る場所へ届いているだろう、か・・・
かずま