私は着る物や持ち物、食べ物にはほとんど関心がない。
(その代わり、自分のつくるものには非常に関心がある、というか、それしかない)
幸い、周りにその道の通がたくさんいるので、その人達の意見に従い、恥をかかずに済んで来た。ただ、折り畳み傘にだけは珍しくこだわりがある。
まず、軽くなければならない。それも「超」が付くくらい軽くなければならない。
でないと、雨の日に荷物が増えて重くなり、不快になる。
次に大きくなければならない。小さいと、バッグが濡れて不快になる。また、雨宿りの人に「どうぞ」と言って傘を差し出すこともできない。
3つ目に、開いた形が綺麗でなければならない。骨が無骨に折れ曲がるのではなく、普通の傘と同じくらい美しいスムーズな曲線の傘でなければ、差す気がしない。
そして最後に、丈夫でなければならない。安いビニール傘のようにすぐに折れ曲り、捨てられるのではなく、多少の雨風にも柳のように耐えて、末永く使える傘でなければならない。
その他、持ち手が持ちやすいとか、折り畳みやすいとかあるが、それらは少々の努力で済むことなので、大したことではない。
そして苦労した挙句、2年程前、日本橋にある傘屋の折り畳み傘に行き着いた。
購入してびっくりした。軽い‼︎
220gしかないので、バッグに入れても入れたことさえ忘れる。そして親骨70cmで開くと122cmと大きい。カーボンの8本骨なので、丈夫で、開いた形も美しい。
おまけに、テフロン加工の撥水性能で、振ると雨が飛んでしまい、すぐにケースにしまえる。
いっぺんで気に入り、雨が降りそうな日はバッグに入れて毎回持ち歩いた。
ところがある日、強い雨風で骨が1本折れてしまった。幸い、購入1年以内だったので、無償で修理してくれた。
先日、またしても強い雨風で骨が1本折れてしまった。今度は1年以上経っているので、1100円払って修理してもらった。
「できました」という電話を受けたので取りに行った。びっくりした。
骨1本直したのではなく、カーボン骨全部が新しくなっている。
聞くと、親骨が強風で少し曲がって動き難くなっているので取り替えた、料金は最初にいただいた分で構いませんと言う。
撥水性が落ちてきたのでどうすればいいのか聞くと、「傘のお手入れガイド」というパンフレットをくれて、最初に付着した汚れや油を落とし、陰干しして乾燥させた後、市販の防水スプレーをたっぷりかけてくださいと言う。
そして、強風の時の傘の持ち方を教えてくれた。
店を出た後、払ったお金の何倍ものお金をもらったような気がした。
店員や職人の、傘を大切に末永く使って欲しいという気持ちがひしひしと伝わってきて、私の心の琴線に触れた。
この店の傘を末永く愛着を持って使うだろう。
かずま