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2019年 08月 26日
世田谷美術館でやっている「高橋秀+藤田桜 素敵なふたり」展を観に行った。 (会期は9/1(日)まで) 前から早く観に行きたいと思っていたのだが、仕事がだらだら続いてなかなか休みが取れず、いつものように会期切れ間近になってしまった。 (昨日は秀さんと桜さんのアーティスト・トークがあるというので12時半頃行ったが、既に整理券は無く、凄い人気に驚いた) 私が高橋秀という造形作家を知ったのは今から40年くらい前で、場所は池袋の西武美術館だった。たまたま観に行った安井賞展に歴代の受賞者の作品も展示してあり、その中に秀さんの作品「月の道」(1961年 第5回展受賞作)もあった。 安井賞は具象画に与えられる賞だが、秀さんの画は完璧な抽象画で、セメントなどのミクストメディアを用いたテクスチャー豊かな作品で、一目で惹かれた。 もちろん、この道を極めて行ってもそれなりの大家になれただろうし、食い扶持に困ることもなかったろう。(実際、画商からそうした類の画の注文を受けたらしい) だが、ここからが秀さんの非凡な所で、そうした求めに対し、逆に危機感を感じ、日本脱出を決意し、イタリア政府招聘留学生となってローマに向かう。(1963年 33歳) 翌年、奥さんの桜さんと長男をローマに迎え、その後2004年に倉敷・沙美海岸に住まいを移すまで、41年間ローマで生活し、創作活動を行う。そして、キャンバスとキャンバスの間の最小の線によるフォルムと空間を活かしたエロスを感じさせる秀さん独自の方法を編み出し、絵画や版画、彫刻へ展開していく。 秀さんに会ったのは丁度そんな時だ。 当時、私は勤めていた菊竹事務所を辞めて、ヨーロッパ放浪の旅をしていた。 日本を出る時、事務所のゴッド・マザーから「あなた、ローマに行った時に秀さんにこれを渡して」と一枚の写真と雑誌を手渡された。それは熊本県伝統工芸館が掲載された雑誌と写真で、秀さんは地下の壁を飾る大きな黒い絵画を制作した。 秀さんと桜さんの住まいはローマ郊外の高台にあり、着くと二人よりも先にアヒルとガチョウが出迎えてくれた(そして脚を噛まれた)。 初対面にもかかわらず二人は気さくに迎えてくれて、ワインを飲みながら楽しいランチが始まった。(桜さんは料理上手でどれも美味しかったが、とりわけサルシッチャ(腸詰め)は未だ食べたことのない美味な味だったので、そう言ったら、「あら、それは秀が昨日市内の知り合いの店で買ってきたのよ。私が作ったんじゃないわ」と笑って言った。正直で天真爛漫な人だ) 私が先日フィレンツェから戻ってきた話をすると、秀さんは「あそこで見るべきものは2つだな。ボッティチェッリの曲線とフラ・アンジェリコの受胎告知だ」と言って熱弁をふるった。秀さんのエロスを生み出す曲線とボッティチェッリの曲線はどこかでつながっている。 南仏やスペインのロマネスクを一つ一つ見て行った旅の話も面白かった。 原点に戻って、そこから何かを感じ考えようとする態度は、全ての話に共通している。 あらかた食事も済んだ頃、「アトリエを見るか?」と聞かれた。 もちろん、見たいと答えたが、創作の秘密を見てもいいのか?という遠慮もあった。だが、秀さんは構わず、離れのアトリエに連れて行き、おもむろに午前中していたキャンバス作りの続きを始めた。 それは不思議なキャンバスで、互いの形はバラバラなのに、ジグソーパズルのように最終的には一枚の四角いキャンバスになった。そして、線は引いていないのに、キャンバスとキャンバスの間の溝の陰影でエロティックな線が浮かび上がった。つまり、私が見た1984年の時点で、秀さん独自の「描かない描き方」は既に完成していた・・・・・・・・・・・・・・・ そんな記憶を展覧会を見ながら思い出していた。 私は初めてローマで二人にお会いした時、不覚にも桜さんが優れた布貼り絵作家であることを知らず、今回の展覧会でまじまじとそれを体感した。 二人の作品が時系列に沿ってパラレルに展開されている中をゆっくり歩きながら、全く別のジャンルや様式にも関わらず、二人の作品がどこかでシンクロしているような感覚を時々覚えた。 たぶん、それは60年以上連れ添いだ者達だけが醸し出せる術なのだろう。 素敵なふたりだ。 かずま
by odysseyofiska
| 2019-08-26 11:16
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