一月程前の話だが、「ブルーノ・ムナーリ展」を世田谷美術館で観た。
ブルーノ・ムナーリは昔から大好きなアーティストで、1985年に青山のこどもの城のオープニング展も観たが、今回の方が数段良かった、というか、初めて全貌が明らかになった展覧会で、観ていくうちにいろんな発見があり、観終わった時には外は真っ暗だった。
ムナーリは一般的にはグラフィックデザイナーと思われているが、その活動の幅は広く、画家、彫刻家、空間デザイナー、編集者、装丁家、絵本作家、マテリアリスト、アイデアリスト、などジャンルを横断して多様だ。
これは、必要に応じて彼が自ら行っていったからで、絵本作家になったのも、息子のために本屋に絵本を買いに行ったら、ろくなのしかなかったので自ら作ったという、有名なエピソードがある。
彼はアーティストである前に、子どものように純真な好奇心を持った人で、それがすべての作品に通底していて、観ていて原初の楽しさに触れるような感覚がある。
今、世田谷区で、子どもの幼児教育・保育のあり方を検討する委員会のお手伝いをしている。
ムナーリを観に行ったのも、(もちろん、好きだから、だが、それだけではなく)この手伝いの参考になるだろうとの思いもあった。もっと言えば、レッジョ・エミリアの考え方をさらに展開できるかもしれないと思った。
レッジョ・エミリアの名前はあまり聞き慣れないかもしれないが、北イタリアの小さな町で、古代より自由と教育を尊ぶ気風のある町だが、第二次大戦後に幼児教育の分野で独自の発展を遂げ、今や世界に影響を及ぼしている。
その教育内容は一言で言えば、子どもの本来持っている才能と自主性を十全に信じ、その多様性を認めて、大人と対等な立場から幼児の教育を捉え直している。
その結果、アートに重きを置いた教育がなされ、(詳しい解説は省くが、)プロジェクト、ドキュメンテーション、アトリエ、アトリエリスタなど、独自の言葉とアプローチが開発され、実践されている。
この内、物語を紡ぎ出して行く作業で、ムナーリの絵本や素材は有効だと直感的に感じていたが、実際、展覧会の最後のコーナーで子ども達がそれを使って遊んでいる姿を見て、ほぼ確信へと変わった。
ただ、こうしたアプローチは、古くはフレーベルの玩具その他にもあり、どれがベストだというものではない。
要は皆どこかで深くつながっている。
女性の社会進出が叫ばれ、その結果、幼稚園より保育園の需要が増し、両方の良いとこ取りをしたこども園化が進んでいる。
社会の要請だから当然なのだが、ただ数や量だけ増やせば良いというのではない。
私自身の経験から言っても、三つ子の魂百までで、やはり最初の教育環境は大切だし、幼少期に感じたことは後々まで深く影響する。
理念や内容がきちんと議論され、
それが具現化された幼児教育施設ができるといい。
かずま