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2014年 05月 03日
ぱさぱさに渇いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて 気難しくなってきたのを 友人のせいにはするな しなやかさを失ったのはどちらなのか 苛立つのを 近親のせいにはするな なにもかも下手だったのはわたくし 初心消えかかるのを 暮しのせいにはするな そもそもが ひよわな志にすぎなかった 駄目なことの一切を 時代のせいにはするな わずかに光る尊厳の放棄 自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ 世田谷文学館でやっている「茨木のり子展」を観に行った。 この文学館は自宅から歩いて20分くらいの所にあり、おもしろい展覧会のある時は行くようにしている。(前回も「星を賣る店 クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会」という、文学と記憶とアートと装釘の入り混じった、おもしろい展覧会をやっていた) 「文学を体験する空間」という館のコンセプトはあながち嘘ではなく、毎回、文学をヴィジュアルかつ具体的に体感できるよう工夫がなされている。 キュレーターの並々ならぬ熱意と創意、そして力量を感じる。 (楽しみながらやってる感じがするのも良い) また、館と隣接する旧宅との間には豊かな水辺の空間があって、鯉がいつも泳いでいる。 私は展覧会を見終わった後、それをボーッと見つめがらいつも疲れた頭を癒す。 近所のお母さんや子供達もよく来て、鯉と話をしている。 世田谷の住宅地にあって、この水辺の空間は貴重だ。 本題に戻ろう。 茨木のり子の「自分の感受性くらい」はもちろん知っていた。 だが、それが晩年の金子光晴が主宰する雑誌に発表されたことは今回初めて知った。というか、茨木のり子が金子光晴と親しく、山之口貘にも精通して、彼らの評伝まで書いていたのには驚いた。 茨木のり子の真っ直ぐで少し頑なな詩と、放浪に生き、生涯自由を貫いた金子光晴や山之口貘の変化に富んだ柔らかな詩とが直ぐには結びつかなかった。 だが、観て行くうちにやがて3者に通底する何かを感じた。それは精神の気高さだ。 茨木のり子にこれまで感じなかった親しみを覚えた。 もう一つ、「汲む」という詩にも新たな発見があった。 この詩も昔から知っていたが、Y・Yが山本安英で、茨木のり子は山本安英の主宰する「ことばの勉強会」に長らく参加していたことを初めて知った。それは単に自分が詩人だからではなく、尊敬する先達の生き方を学びたいという純粋な気持ちからだったのだろう。 汲む ―Y・Yに― 大人になるというのは すれっからしになることだと 思い込んでいた少女の頃 立居振舞の美しい 発音の正確な 素敵な女のひとと会いました そのひとは私の背のびを見すかしたように なにげない話に言いました 初々しさが大切なの 人に対しても世の中に対しても 人を人とも思わなくなったとき 堕落が始るのね 墜ちてゆくのを 隠そうとしても 隠せなかった人を何人も見ました 私はどきんとし そして深く悟りました 大人になってもどぎまぎしたっていいんだな ぎこちない挨拶 醜く赤くなる 失語症 なめらかでないしぐさ 子供の悪態にさえ傷ついてしまう 頼りない生牡蠣のような感受性 それらを鍛える必要は少しもなかったのだな 年老いても咲きたての薔薇 柔らかく 外にむかってひらかれるのこそ難しい あらゆる仕事 すべてのいい仕事の核には 震える弱いアンテナが隠されている きっと…… わたくしもかつてのあの人と同じくらいの年になりました たちかえり 今もときどきその意味を ひっそり汲むことがあるのです この詩に20代のはじめに出会った頃は、ああ、そんなもんかと思ったが、今改めて読み返してみると、ああ、このまま生きてていいんだな、と背中を押されるような、勇気をもらったような気持ちさえしてくる。 最後のコーナーには「Yの箱」があった。 最愛の夫、三浦安信が亡くなった後、31年間に渡って書き溜められた、恋唄としか言い様のない詩や草稿が収められた箱で、生前は発表を拒み、死の翌年(2007)最後の詩集(「歳月」)として刊行されたものだ。 読むと、茨木のり子にしては珍しく性愛を扱った艶かしい詩もあって、初々しさと年月とが交わった、とてもいい詩集だった。 茨木のり子は夫の死後、突然、ハングル語を習い始め、韓国の詩人との交流や彼らの詩の翻訳を精力的に始める。それは淋しさを紛らわすだけでなく、戦争という時代を生きた人間の、自分の成すべきことを成そうと思う良心から出た行動だったと思う。 顔だけでなく心も美人でカッコイイ人だ。 また来よう。 かずま
by odysseyofiska
| 2014-05-03 23:41
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