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2013年 05月 18日
日本橋でワインのカジュアルレストランを設計している。 お店が入居する高層の建物は既に建設中で、最後に出店が決まった私達のグループはてんやわんやである。担当のN君や元シェフのM君、設備のOさんの努力でようやく形が見えて来た。 この設計をするにあたってクライアントにはできる限り時間を取ってもらい、打合せを密にしてその要望を120%設計に反映するようにした。 もちろん、時間が無かったので、厨房や防火区画、設備、B工事とC工事の接点から決めざるを得なかったというのもあるが、たとえそうでなかったとしても、私は同じ手順と方法を踏んでやっただろうと思う。 デザインはできるだけ遅らせたかった。 特に何かを先導するデザインを最初に提示することだけはしたくなかった。 できることならこうした機能的な話をして行く中で自然にデザインが生まれ、勝手に成長し増殖して行ったらいいなと思っていた。 それはいつも考えていることでもある。 学生の頃や設計事務所に勤めていた頃は才気煥発なデザインに憧れ、自分もそうしたい、そうしようと思っていた。 だが、30の時に9ヶ月間ヨーロッパを放浪し、少し肩の力が抜けると、日本が昔から持っていた自然で柔軟な感じ方や考え方、つくり方にひどく惹かれるようになった。 形を無理やり押し付ける恣意的デザインに反発を感じるようになった。 転機になったのは33の時にコンペで選ばれ、私のデビュー作となった世田谷の公衆トイレだ。 これは敷地を見に行き、1時間ほど周囲を散策するうちに自然と生まれたもので、無理やり形をつくったものではない。しかし、あまりに個性的で今までにない形の公衆トイレだったため、一部の人から建築家のエゴのデザインのように言われ、ひどく傷ついた。 形に対してより過敏になるようになった。 丁度その頃、大阪で平和資料館のコンペがおこなわれた。 敷地を見に行き、周辺の大阪城公園や前面の高速道路を行ったり来たりするうちに、空堀に周囲を囲まれ地下に埋まってトップライトと一枚の壁とそれを貫通するスロープしか見えて来ない、地面に刻んだ彫刻かインスタレーションのような建物が自然と浮かんで来た。 結果はシーラカンスの過剰なデザインが勝ち、私達は佳作だったが、一つの確信を得た。 その後、私はどんどん形やデザインを捨てて行き、親を看るためにつくった二世帯住宅はストイックなくらいふつうにつくった。 (だが、実際、自分で住んでみると、自分が全然ストイックな人間ではないことを知り、以後この方向はやめることにした) だが、依然として形の生成過程については過敏で、恣意的なものや意味の無いものを排除する癖は抜けない。また、ただ美しいだけのホワイトキューブや、逆に過剰なくらいデザインされたものには全然惹かれないし、やる気もしない。 デザインにおいて、私は依然として放浪の旅を続けている。 大学で教えていた頃、学生からよく「先生、建築ってアートですよね?」と訊かれた。 「そうだね、不自由なアートだね」といつも答えていた。 建築はどこまで行っても彫刻や絵画のような純粋アートとは違い、用を足さなければ意味がない。必然的に「用の美」を求めることになる。 だからプロダクトや民芸と似ている。 だが、この「用」というものをさらに過剰に追いかけ、その粒子にもの凄い加速度を加えて建築にぶつけたら、突き抜けて純粋アートではできない新しい世界が見えて来るかもしれない。 例えていえば新幹線の「カモノハシ」君だ。 私はこの形が大好きで、駅で見かけると必ず写真を撮る癖があるのだが、その度にこのユニークな形がトンネル内の衝撃音を和らげるためのエアロダイナミクスから来ていることに新鮮な驚きと喜びを感じる。 風がデザインしたのだ。 人間が恣意的に考えてつくったデザインではない。 ここにデザイン(形)と機能(用)の幸福な関係がある。 ワインのカジュアルレストランの設計はこれからいよいよ実施と詳細に入る。 床はイスとテーブルで埋まり、少しだけあった壁もワインの貯蔵庫やディスプレイで埋まりそうだ。必然的に残るのは天井で、いろんなものを交通整理しながら線を引いて行ったら最後にこういう形が残った。 知らない人にとっては恣意的なデザインに映るかもしれないが、私にとってそれは必然だ。 できることなら「用」なるものをさらに追いかけ、その先にある何かにタッチしたい。 かずま
by odysseyofiska
| 2013-05-18 21:15
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