梅雨は鬱陶しくて楽しみなど無いように思われがちだが、私には一つだけある。
井の頭線に乗って車窓から外の景色を眺めることだ。
以前、久我山に住んでいた頃、偶然発見したのだが、窓の外に紫や空色、ピンク、白、クリーム色の花が咲き乱れ、しかも雨に濡れ、色鮮やかで、黄緑色の葉に囲まれた姿は殊の外美しい。それが渋谷から吉祥寺までの線路の脇や切り通しの斜面にずっと続くのだ。
アジサイ王国だ!
この王国に初めて気づいた日は雨だったが、その中で、切り通しの斜面に黙々とアジサイの花を植える雨合羽の人の姿があった。一辺で京王電鉄のファンになった。
井の頭線に初めて乗ったのは確か中学生の頃で、その時は、なんて田舎の電車なんだろう!と思った。車両は短いし、ホームの端に立てば隣の駅も見える。駅も木造でダサイ・・・とまあ、評価は低かったのだが、その後逆転し、今では都電荒川線、東急世田谷線と並ぶ、東京で一番贅沢な電車だと感じている。
しかもこうした美観に常に心が払われている。
井の頭線は春も車窓からの景色が美しい。それを見ているうちに、日本が桜の国だということに自然と気づかされる。
こうした美意識を大切にし、私も自分自身の王国を建国したい。
かずま