代官山の八幡通りで手掛けていたビストロが完成し、先日、引き渡しをした。
このビストロは通りに面してはいるが2階にあり、気をつけてないと通り過ぎてしまいそうになる。そこで外部の壁に、店名でもある La Table Ronde(円卓)が飛び出している。
この店名はM氏の発案で、正確には Chevaliers de La Table Ronde という。
アーサー王の「円卓の騎士」のことなのかと思ったが、本当は古くからフランスにある飲んべえた達の唄の名なのだという。円卓という名の通り、店内にあるテーブルはすべて丸で、レイアウトも比較的自由で、寛いだ感がある。
壁は当初は白のままだったが、少し淋しいね、ということになり、私が絵を描く羽目になった。そこで、ある日の真夜中、行きつけのレストランで、そこにいるお客やホールのメンバーをインクで描いた。それが上の絵である。
その一部分が、本物の円卓を取り囲むように、壁やガラスの腰壁に貼られている。
私は人気の無いレストランに最初に入るのは恐くて勇気がいるのだが、これならそんなに勇気が無くとも暖かく迎え入れてもらえるだろう。
設計の当初からこだわっていたことの一つに、お客の視線やホールの動線、厨房内のシェフの見え方がある。(この店の自慢は、シェフがイケメンで腕も立つことである)
どれが一番重要というのではなく、どれもが重要だと考え、通常のレストランより裏方さんを引き立てることに注意を払った。
例えば、シェフはコクピット内からすべてを見渡しながら指示が出せ、ホールはその周囲をグルッと廻りながら、ワンウェイで皿を下げ次の支度をしてフロアアテンダントに出て行ける。お客は店に入って来て最初にコクピット内のシェフを見、斜めに振られたカウンターに沿って自然と窓側の客席へ導かれて行く・・・
こうしたことがほぼ意図通りにできたのは、担当のM君が某有名レストランの元シェフで、前もってこうしたことを理解していたからで、イケメンシェフとの打合せはまるで兄弟の会話のようだった。
2人の熱意とそれに応える施工者がいて、いい物ができた。
9月のオープンが待ち遠しい。
みんなに来てもらいたい。
かずま