旅をするのが好きだ。
酒を飲む時と似てて、嘘偽りや建前から解放され、本来の自分に戻れるような、
そんな気が自然としてくる。
じゃ、いつ頃からそういう風になり始めたのかを考えてみると、やはり社会との接点、
高校生や大学生、社会人として生き始めた頃から始まった習癖のように思う。
それまでは生きてること自体が本来の自分で、何の矛盾も感じなかった。
私は社会との折り合いをつけるのがヘタな人間だ。
だから17才の頃から常にその軋轢と戦ってきた。
そしてそれに疲れる度に、旅に出たり、酒を飲んだり
した。そして再び本来の自分と出会い、元に戻ることができた。
もし旅と酒が(そして私の愛するJazzとCinemaが)無ければ、とっくに私の人生は終わっていただろう。
人は誰でも心の中に自分だけの旅の物語を持っている。
そしてそれは実際の旅だけで終わらず、常に心の中で反芻され増幅され、
毎日の生活の中で新たな旅が生まれている。
仕事場にいても、家庭にいても、喫茶店でボーッとしていても、
常に旅は始まっている。
30年前、若者はヨーロッパを放浪し、いろんな街やいろんな人と出逢った。
その街の地形や風土、歴史に魅せられ、人に魅せられ、若者は素直にそれを描いた。
その時、彼が本来の自分であったことは間違いない。
それから30年が経ち、若者は年をとった。
はたして彼が本来の自分のままでいるのか、それとも別人になってしまったのか・・・
それを知るため、もう一度、旅に出ようか・・・
かずま